どらごん・はんたぁすーぱー☆なちゅらる裏話

COLUMN

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新規:2010年3月2日
 
 2010年より2つの新シリーズを始めました。集英社スーパーダッシュ文庫から「どらごん・はんたぁ」と、HJ文庫から「すーぱー☆なちゅらる」です。
 たぶん2つを読まれた方は、2つの物語が多くの点で似てると感じたでしょう。これは偶然でしょうか?
 ぶっちゃけて言うと、2作品は同じ企画から生まれた物語です。だから似ているのも当然です。
 となると、どうして同じ企画で作品を書くことになったのかと疑問に感じるでしょう。
 これより今回の状況に至った経緯を順を逐って語ります。
 一部で「面白い試み」と好意的に解釈してくださっている方もいらっしゃいますが、違いますよぉ〜。(汗)
 もちろん、両方に同じ企画を出したら通っちゃったというものでもありません。

 なお経緯の説明上、不愉快な内容もあるために2段構えの裏話とし、このページは概要のみの裏話です。
 詳細に関しては別ページに書いておきました。読んで不愉快に感じる方がいるかと思うので、お読みになる時は自己責任でお願いします。 →詳細ページ

 それと余談ながら「どらごん・はんたぁ」の方を先に書いているのは、出版社の力関係ではありません。出版こそ「すーぱー☆なちゅらる」の方が先になりましたが、企画も執筆も「どらごん・はんたぁ」→「すーぱー☆なちゅらる」という流れでした。なので順番通りに「どらごん・はんたぁ」を先に書いています。


構想の経緯

最初は某社で企画したものでした
 元となった物語は、某社から声を掛けられて始まりました。
 そこでいろいろあって「学園ファンタジー」を書くことになったのですが……。

日本を舞台にした近未来版が生まれた理由
 なんというか某社の担当編集者とは言葉が通じず、まったくコミュニケーションが取れませんでした。
 その状態が半年も続いたので、このままでは埒が明かないと判断し、舞台を変えてみようと思い付いたのが近未来版の誕生です。
 と言っても、ワープロソフトの検索置換機能で固有名詞等を日本風に変えてみただけです。
 王家を財閥に変え、魔法を超能力に置き換え、人物名は語感や直訳で適当に変換したため、ジェリー・シムニフェートを霜野千恵理、マキナ・テメリオイを寺尾牧菜と置き換えるなど、かなりいい加減でした。学園の名前もユニベルシタース学園のベルから鈴を連想して、そこから頭に浮かんだ鈴川をもじって珠洲川学園としてましたし……。
 ところが、それを送ったところで返ってきた言葉が「格段に面白くなった」「魅力的な設定が多い」でしたので、ならばこれで進めようと思ったのですが……。

 この時の返事から1か月後に物別れとなり、某社との縁は切れました。
 余談ながらあちらの名目は、「『学園ファンタジー』を注文したのに、それ以外の作品になったから」だそうです。なるほど……。



SD文庫での学園ファンタジー「どらごん・はんたぁ」

妙にあっさりと……
 某社との関係が切れた直後、上記の企画を他の2つと一緒にSD文庫へ持ち込みました。この時に出したのは近未来版のみでした。
 この時に対応に出てきた編集さんが近未来版の企画を見て、内容に疑問を感じたようです。そこで雑談の中で元になった学園ファンタジー版があるという話になり、それを求められました。そして改めて提出したところ、その学園ファンタジー版の企画がもっとも完成度が高いということで、この企画でシリーズを立ち上げることとなります。
 それも何か落とし穴があるのかと勘ぐりたくなるほど、あまりにもあっさりと……。

SD版を進めるにあたって
 上でSD文庫に持ち込んだ企画は、某社で手を加えていた最後のものでした。
 ですが、改めてSD文庫で企画を動かすにあたり、過去のプロットを読み返して、もっとも気に入ったものを選び直しました。そこに近未来版で生まれた面白いと感じる要素も盛り込みました。
 それをSD文庫編集部に再提出して通ったので、それで原稿を書き始めています。

 初稿を書き上げたあとで大きな問題になったのは、最後のクライマックスをどうするかでした。
 この時のクライマックスは、魔法石を取りに行ったノルンが偶発的に魔竜を召還してしまうというものでした。
 しかし、それでは作品の雰囲気が前半と違うということで、この魔竜をどうするかが問題となりました。その解決策が化石です。
 それまでは召喚術師の魔力を秘めたノルンと、魔法石=鉱物〜地質学の話を書こうと考えていました。ですが、ここでノルンの秘めた魔力を使役魔法使いにして、化石=古生物の話に切り替えます。当然、召還されるドラゴンも怖いものでは雰囲気が壊れるのでコメディ調に変えました。またノルンが使役魔法を使うエピソードを早いうちに出すために、黒ネコのぬいぐるみも登場させます。
 これがSDの最終版となりました。



HJ文庫での近未来版「すーぱー☆なちゅらる」

すべては私の手違いから始まりました
 SD文庫へ企画を持ち込んだのとほぼ同じ頃、HJ文庫の担当さんにも某社で動かしていた2つの企画(学園ファンタジー版と近未来版)を見てもらいました。某社の担当編集者とコミュニケーションが取れなかったので、その原因が企画にあるのか意見を求めるつもりでした。

 ところが、ここで思わぬ事態が発生します。担当さんがこの企画を企画会議に流してしまい、なんと通ってしまったのです。
 企画を見せて意見を求めようとした時に「これは企画提出用ではない」と一筆しておくのを忘れた、私の大失敗です。
 あちらも忙しいのですから、口頭で伝えたことを一々憶えてられませんものね。
 不幸中の幸いはSD文庫とは違って、HJ文庫では「私の本領発揮を望む」ということで近未来版の方を選んでくれたこと。とはいえ企画会議を通ってしまったために事情を説明しても他の企画へ変えてもらえず、しかも内容にも大きく手を加えることができなくなりました。
 とにかく「企画は通ってしまったのだから、このまま進めてください」と……。
 それに近未来版をやるとは思っていませんでしたから、この近未来版で面白いと思ったエピソードを、「どらごん・はんたぁ」の方でどんどんと流用して使ってしまいました。その「どらごん・はんたぁ」の初稿が書き上がったあとでの決定でしたので大慌てです。
 私としては一緒に出した「くじびき」の未来編か、他の2作品だと思っていましたから……。

 当然ですが特殊能力の設定もまったく考えていません。それなのに「くじびき」のままの刊行スケジュールで進めるということが決まっている上に、新シリーズなので締め切りは準備のために1か月前倒し。という中での見切り発車でしたから、まあ、何といいますか……。
 取り敢えずは発売されたものがHJの最終版です。(何も言わないで)



最後に2作品の比較

設定の比較一覧
設定
学園ファンタジー版(SD)
「どらごん・はんたぁ」
近未来版(HJ) 「すーぱー☆なちゅらる」
初期
最終
物語 舞台 トリモンド 日本の新興都市 日本の特別市(学園研究特区)
時代 近世風 近未来
(左に同じ)
学園 校名 ユニベルシタース学園 珠洲川学園 神通学園
校種 総合学園 私立学園 私立総合学園
場所 主要三国の国境線上 日本のどこか 珠洲川特別市(学園研究特区)
規模 学園の敷地は大きく、校内に運河がある  都市のような巨大学園 都市そのものが学園の一部
防御 外壁 治外法権
(左に同じ/行政特区)
制服 私服禁止 私服禁止 学園内での私服禁止
改造は自由 改造は自由 改造は禁止だが組み合わせは自由
特殊能力 種別 魔法 超能力 SNP能力(新物理)
社会 魔導師がインフラを支える 工業化研究中 すでに工業化されている
魔導師嫌いの宗教が幅を利かせる 超能力はいまだオカルト SNPはオカルト扱いで報道される
5年前の事件 六十年戦争の終結 超能力研究所の事故 SNP研究所の事故
人口の6割が戦争の犠牲になる 研究者の6割が死傷 死者17人、負傷者60人以上
主人公 名前 ノルン・ターレン 田布施ノルン 青根リーヤ
境遇 王家の姫 大企業の令嬢 大財閥の令嬢
少年たちより2歳年下(飛び級) 少年たちより2歳年下(飛び級) 少年たちより1歳年下(飛び入学)
父から2つの使命を与えられる 母から2つの目標を与えられる
(特に設定なし)
性格 負けず嫌い/奔放 高飛車 お子様/意地っ張り
能力 強力な魔力の持ち主、でも制御できない 強力な超能力者 トップクラスのSNP能力者
魔法を使うと自爆する うまく使えなくて暴走する
(左に同じ)
少年 名前 エリオ・ヒルキア 稗田越也 牧野越也
過去 元若獅子魔導師/英才 超能力被験者 SNP被験者
境遇 戦争で父を失う 事故で父を失う
(左に同じ)
推薦入学/特別奨学生 特別奨学生
(左に同じ)
目標 大商人 実業家
(特に設定なし)
サブヒロイン 名前 ジェリー・シムニフェート 霜野千恵理
(左に同じ)
過去 元若獅子魔導師/英才 超能力被験者 SNP被験者
境遇 戦争で家族を失う 事故で両親を失う
(左に同じ)
若き研究者 若き研究者 若き研究者、でも一般常識が怪しい?
少年の幼なじみ 少年の幼なじみ
(左に同じ)
主人公とは初対面 主人公とは初対面
主人公の先輩
性格 冷静沈着/やや冷たい 学者然/冷めた優等生タイプ 陽気/天然ボケ
趣味 料理、絵画 料理 料理
メイド 名前 マキナ・テメリオイ 寺尾牧菜 クリスティーネ・ラヴィノーヴィチ
境遇 主人公の専属メイド 主人公の専属メイド 別荘管理人の娘(自称メイド)
主人公の付き添いで入学 主人公の付き添いで入学 留学生、勤労奨学生で仕事がメイド
属性 落ちこぼれ 落ちこぼれ オタク
大魔導師 名前 ネッコ(プロフェッサー・ネッコ) ネッコ・アホネン ニコ=ペッカ・アホネン
境遇 オピフランカの大魔王 大物理学者
(左に同じ)
プレビス教会から嫌われている 物理学界追放
(左に同じ)
担当教師 名前 ディープ・フライド 揚田厚司 御神楽徳人
過去 元若獅子魔導師/隊長クラス 超能力被験者 SNP被験者
境遇 戦争で家族を失う 事故で両親を失う
(左に同じ)
少年たちの元リーダー 少年たちの先輩
(左に同じ)
関係 少年たちのクラスの担任 講師 少年たちのクラスの副担任
術式 呪符魔法使い 祖父が宮司で陰陽風
(特に設定なし、名前に名残)
専門 魔法実技 超能力実技 SNP全般
2巻登場予定の
   新キャラ
名前 アエス・カペレ 女木沢優紀
(左に同じ)
過去 元若獅子魔導師補欠 超能力被験者 SNP被験者
立場 主人公のクラスメート 主人公のクラスメート
(左に同じ)
対立相手 プレビス教(魔導師嫌い) マスコミ(超能力否定論者)  マスコミ(SNP否定論者)

物語の比較一覧
学園ファンタジー版(SD)
「どらごん・はんたぁ」
近未来版(HJ) 「すーぱー☆なちゅらる」
初期
最終
物語の冒頭
ホテルのお風呂が壊れていた 寮のシャワーが壊れてる
(左に同じ)
川原での出会い ゲストルームでの出会い
(左に同じ)
主人公が裸 主人公が裸 少年が裸
第1章
(学園案内)
買い物などで学園を散策 学園内を案内 学園研究都市を案内
主人公とサブヒロインは隣部屋 主人公とサブヒロインは隣部屋   
(左に同じ)
お風呂に入らないまま寝ちゃった     直し忘れでシャワーが使えない
(左に同じ)
第2章
(特殊能力の説明)
魔法の自主練習 超能力の自主練習 SNPの自主練習
魔法に失敗すると自爆 練習で失敗して爆発事故
(左に同じ)
第3章
(能力の実践投入)
イヤな先輩の腕試し イヤな大学生の無理難題 SNP否定論者の大学生
少年と先輩たちの戦い 超能力を見せつけようとして暴走
(場面削除/次章と統合)
第4章
(暴走事件)
魔法石採掘場へお出掛け 新しい練習場所を求めて大学へ
(左に同じ/前章へ移動)
古代ドラゴンが暴れる 超能力が暴走 SNP機械が暴走
エピローグ
新入生のホームルーム 新入生のホームルーム
(左に同じ)
また主人公の魔法が暴走 主人公が超能力を使って失敗 主人公がSNPを使って失敗