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公開:2018年3月14日 更新:2018年4月12日

エンタメ小説史〜中世後期

中世文学
 日本では平安時代の後半から鎌倉時代にかけて、お寺などで庶民向けの教育が始まりました。
 そのおかげで、のちの童話になる庶民向けの小説も生まれます。
平家物語
 武士階級向けに書かれた、数多くの軍記物語の一つです。
 これはエンタメ小説ではありませんが、これで戦い方や心構えを学んだようです。
御伽草子
 それまでの小説は、貴族が好む長編の恋愛小説や、武士が好む軍記物が中心でした。
 ですが庶民も読み書きできるようになると、当然、庶民が好むような作品も生まれてきます。庶民が主人公になる話だけでなく、神仏の化身や擬人化した動物などが出てくる作品が数多く生み出されました。
 御伽草子はそういう中から短編を集めたもので、今でいうライトノベルのようなジャンルでしょう。400編以上が生まれたようです。
 その中には「浦島太郎」「一寸法師」「ものぐさ太郎」「カチカチ山」「舌切りスズメ」など、のちの時代に教訓めいた童話として残ったものがあります。
 
 註:ただし「浦島太郎」のオリジナルは、古事記以前からあった神話・伝説の一部です。

 

余談、イエズス会宣教師の手記より
 戦国時代に日本に来たフランシスコ・ザビエルなどの宣教師の残した手記に、当時の庶民の暮らしが記録されてます。
 その中には旅の途中で立ち寄った茶店で、接客をした町娘が本を読んで笑いつつ、会計を暗算でやってお釣りを返してきたことに大変驚いたという記録が残っています。
 たぶん、コメディ色の強い小説を読んでいたのでしょうね。
 この時代、貸本ですが庶民にも本を読む習慣ができてました。一説には当時の識字率は6割近くあったそうです。
 話ついでに、日本では昔から教育は読み書きソロバンが基本ですから、暗算も庶民にとっては当たり前だったでしょう。
 それに対してヨーロッパでは識字率数%で、計算の方も意外に思うでしょうが後世に名の知られた大学者でも簡単な暗算もできない人が珍しくありません。
 なんせヨーロッパでは18世紀まで桁合わせするという発想がイタリア商人の中だけで使われる秘術となっていて、多くの人は計算屋という職業の人たちの作った様々な数表の中から、求める答えを探すという計算のやり方をしてました。
 そのため日本の10歳ぐらいの子供が10分ぐらいかけるような計算だと、あちらでは学者が数表を手に何日もかけて計算していたそうです。
 ちなみに計算屋という職業は、20世紀初頭まであったそうです。