公開:2018年3月14日 更新:2018年3月14日
コラム 上京した作家の住む場所
- ある編集者さんが語ってました
- 「新百合や横浜までは行くけど、さすがにそこから先は……ねぇ。でも、熱海を超えたら気合いが入るよ!」
- 日ごろの様子伺いや、原稿を取り立てに行く時の話です。
- 新百合というのは、小田急線の新百合ヶ丘駅のことです。その当時から私が小田急線沿線に住んでいますので。
- 場所としては、山の手線最寄り駅から急行で30分ちょっとの距離でしょうかね。
- 実はこの距離は上京してきた作家さん限定ですが、その人が小説家なのか、シナリオライターなのかを見分ける良い目安になってます。
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- シナリオライターは出版社の近くに住みたい?(山の手線最寄りから急行で15分以内)
- シナリオライターは「作家でいること」が一番の目的なので、編集者に顔を売るためにすぐ会える環境を求めるのでしょう。
- 中野周辺はアニメ関係、池袋は何でしたっけ。東京23区や東急東横線沿線がすぐに頭に浮かびます。
- お世話になっている出版社には週2〜3回も顔を出して、「何度も来る暇があったら原稿書け」と言われたという人もいたそうです。
- 編集者に飲み会に誘われたら、すぐ出かけられる距離でしょうか。それだけに、シナリオライターたちは出版社の人事異動情報を早くつかみます。
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- 小説家は静かな環境を好む?(山の手線最寄り駅から急行で30分〜1時間半)
- 小説家は「物語を作る」ことが一番の目的なので、海や山の見える静かな環境を求めるのでしょうかね。
- 多くの人が「作家の多く住む場所」として思い浮かべるのは神奈川県の鎌倉市や葉山町でしょう。
- 同じ県の湯河原町も鉄道ミステリーの大御所──西村京太郎さんの住む町として有名です。編集者さんが「気合いが入る」という熱海の一つ手前の駅なのは偶然でしょうかね? 他にも作家さんが住まれてるのか、この町の図書館は気合いが入ってます。
- この距離は打ち合わせのためにすぐ上京できて、それでいて編集者が滅多に見回りには来ない絶妙な距離です。みなさん、そこまで深く考えてないと思いますが、小説家としての本能の距離でしょうか。埼玉や千葉方面も、やはり都心から離れた環状に散らばっている感じです。
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- 生き残るためにシナリオライターを装う小説家(山の手線最寄り駅から25分〜35分)
- 新人賞の出身ではなく、発表する作品もシナリオライター寄りなのに、普段の言動が小説家寄りなので「さて、どちら側だろう」と判断に迷う3人がいました。10年以上前の話です。
- でも、その人たちはその後、ここぞという時に小説家としての作品を世に出して、そのうち2人は成功した感じがします。
- たぶん、この3人は世渡りのためか、力がつくまでか、ここぞというチャンスが来るまでの間、シナリオライターのフリをしていたのでしょうね。こういう器用な生き方のできる人はうらやましく感じます。
- で、その3人の住む場所は、見事に最初に書いた小田急線新百合ヶ丘のすぐ外側でした。1人は新百合ヶ丘で急行から各駅停車に乗り換える急行の止まらない駅の沿線、他の2人も新百合ヶ丘の先で、同じように各駅停車に乗り換える急行の止まらない駅の沿線だったり、JRに乗り換えたところの沿線だったり。
- え? 単に家賃で選んだだけ? それはどうでしょうねぇ。あのあたりは急行が止まらない駅の方が街が発展していて、家賃が高めで乗降客数も多いなんてところもありますし……。
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- さて、こういう傾向はただの偶然か、それなりに意味があるのか……。