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公開:2018年3月14日 更新:2018年3月14日

評価の谷

評価曲線
トップのすぐ下は知られない
 第一人者という言葉があるように、どの分野も1番の人や存在については多くの人が名前を知ってます。
 反対に4位以下となると国民的なモノでない限り、まず知られることはありません。2番目がまったく知られてないことも珍しくありません。
 日本で2番目に高い山の名前は言えますか? 世界で2番目に高い山も、愛称のK2(カラコルム山脈で測量した2番目の山という略称)ではなく本当の名前は言えますか?
実力はあるのに評価されない不遇
 よく世の中の人は「自分にも周りが認めてくれるような才能が欲しい」と言いますが、才能はほどほどで高くない方が幸せかもしれません。
 才能は必ず他の才能も併せ持つので、多くの人は他の分野でも活躍できる可能性は高いでしょう。その意味で才能はあった方が良いと思うのは自然です。
 ところが、その才能が一線を超えた場合、プロになるかならないかで悩む瞬間が来ます。
 そこでハイリスク・ハイリターンを狙ってプロの世界へ踏み出した人の多くは、残念ながら評価の谷へ落ちていきます。
 あとは谷の左側で底に落ちる前にあきらめるか、ある程度の評価を受けて谷の右側で底まで落ちずに済むかは時の運。もしかしたら谷底まで真っ逆さまになるかもしれません。
 
 これは会社組織でも同じですね。
 高い評価を受けた社員は課長、部長と出世して、当然賃金も高くなります。
 ところが経営陣や上司を脅かすような実力を見せると、たちまち左遷されたり、難癖をつけてリストラに遭ったりします。
 その前に独立して、事業を(おこ)そうとする人もいます。でも、ほとんどは個人事業や零細で終わり、上場したり著名人になるほど成功するのは1500人に1人といいます。中には失敗して借金まみれのどん底人生へ突き落とされます。
 これがまさに評価の谷です。
 
 また前のトップの評価でも書きましたが、世の中の人たちは物事をよく知らない人ほどチャンピオンデータだけで語ります。
「プロならばこのぐらいできるでしょ」という有り得ないほど高い期待や、勝手な思い込みで求めてくる人もいます。その結果、「プロなのに、こんなこともできないの?」と、これまた一方的に評価を落としてくることもあります。
   ・勝負ごとのプロなら、無名のプロには勝って当たり前という期待(あなたが知らないだけで、相手も同じプロですよ)
   ・プロ野球の4番打者なら、打って当たり前という期待(3割バッターでもすごいのに?)
   ・医者なのに、ケガや病気が治せないの?(治療には限界がありますし、患者が治療のヒントを隠すこともあります)
   ・学者なのに、そんなことも知らないの?(学者に専門分野外の詳しい知識を求めてはいけません)
   ・音楽家なのに、こんな曲も知らないの?(クラシック音楽家に最新流行曲や、若い歌手にナツメロを求めてはいけません)
   ・作家を何年もやってるのに、テレビに出てないの? じゃあ、売れてないんだ。(そんな人はごく一部です)
    等々──
 これもまた評価の谷です。
芸術作品にもある評価の谷
 この現象はロボット工学の石黒浩博士が「不気味の谷」と名付けたことで有名になりました。
 ロボット(人形)は、リアルになるほど不気味に思える瞬間があるという現象です。
 マンガやイラストの画力にもあります。写実的で上手い絵は、誰でも高く評価します。でも、絵柄にもよりますが、画力がある一線を越えた瞬間、急に「これじゃない」という感じを受けることがあります。
 顔がアニメ絵のままなのに、背景や衣装の描写や塗りが写実的すぎた時の違和感といえば、なんとなく伝わるでしょうか。
 これがまさに評価の谷へ落ちていく現象です。