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最終更新日:2008年9月10日
返信用の封筒や切手は入れないように
返信用の封筒や切手があると対応に困る。
これは、かなり多くの作家さんたちが抱える悩みのようです。かくいう私もその一人です。
では、どうして困るのでしょう。理由は簡単、いつ返事を書けるかわからないからです。
まずファンレターは送られた出版社で一度止まります。それから何かのついでの時に作家に転送されます。早ければ1週間ほどで作家の手元に届く場合がありますが、場合によっては半年以上もかかる場合もあります。
また、ファンレターが届いたからといって、すぐ返事を出せるとは限りません。執筆作業の忙しい時だと、どうしても返事は後回しになります。そこで年賀状や暑中見舞い、寒中見舞いの時に、まとめて返事を出す人もいるほどです。
そんな作家さんの中には返信用の封筒や切手のあるファンレターがあると、それが気になって原稿の進みが悪くなる人がいるそうです。せっかく応援のために送ったファンレターが、次の作品が出るのを遅くする原因になることがある。これは作家にとってもファンにとっても不幸なことです。
まあ、そこまで極端ではなくても、やはりなかなか返事を書けないのに、目の前に返信用の封筒や切手があるというのは、正直、何か急かされているようで気持ちの良いものではありません。
一般的な手紙のマナーとしては、返事が欲しい時、自分の宛て名を書いた封筒に切手を貼って同封するのが常識です。返事がハガキになるかもしれませんので、切手のみを送るのも礼儀に反しません。
しかし上に書いた理由からファンレターは一般的なマナーの例外と考えて、ファンレターの中には返信用の切手も封筒も入れないようにお願いします。
作家、イラストレーターの連名はやめて
作家とイラストレーター連名で送られてきたファンレターは、どちらかにコピーが送られます。ですが対応する編集者さんが忙しいと、コピーを忘れて一方へだけ送られてしまうことがあります。
もし、それぞれに読んでもらいたいと思いましたら、お手数ですが2通書くようにお願いします。
便箋(びんせん)の枚数
読者からの手紙は便箋で2枚が一番多いでしょうか。個人差はありますが、2〜3枚あれば、だいたい文章として気持ちを表わせるのでしょう。
ところが延々と12枚にもわたって感想を書き連ねた強者(つわもの)がいました。他にも数回に分けて感想を3〜4枚ずつ書い送ってきた方もいます。その迫力には、ただただ脱帽でした。
封筒は個性だ!
封筒は不思議なもので、茶封筒や白封筒はまず女性ファンは使いません。そのため葵(まもる)くん、萌(はじめ)くん、和美(かずよし)くんのように、普通なら読みがわからないと女性と思ってしまう名前の方でも、封筒を見ただけで男性ファンと認識できます。
ファンレターの常連さんの中には、封筒で誰かわかるファンがいます。天気図や雲、酒ビンや酒樽、ビールの銘柄、妖精のプリント。文房具屋に行くと、様々なレターセットが並んでいます。その中から作家や作品のイメージに合わせた柄を選んで使っているのです。そこまで凝(こ)らなくても、チェック柄やピンクやライトグリーンなど、いつも同じ封筒を使う方がいます。
他にもプリンターで自作したオリジナル封筒を使う方もいました。 このオリジナルは今のところ男性ファン限定でしょうか。
このような封筒は実に個性的です。3通目ともなると記憶に残っていて、そのファンレターを最初に手に取って読むこともあります。
文章は語尾を「ですます」にした口語体が一番、でも「てにをは」は忘れないで
慣れない敬語や丁寧(ていねい)語の手紙よりも、読者が日頃使っている口語体の文章の方が読みやすいですし、読者の個性が感じられるように思います。たぶん敬語だと身構えてしまって、妙に堅苦しい文章になるからではないでしょうか。
ですけど、本当の話し言葉のままでは、意外と読みづらい文章になります。そこで語尾を「ですます」にするのと、「てにをは」には気を使って欲しいと思います。たったこれだけでも、かなり読みやすい文章になると思います。
手書きが一番
手書きの文字には書いた人の個性が現われます。文字の大きさや形などで、どんな読者か想像できるのが楽しいものです。
文字の形から、その人が作品をどんな視点で見ているかわかることもあります。
またファンレターには「作家になりたい」と書いてくる方もいますが、文字の形から本気なのか漠然と考えているだけなのか、野心的で本気で狙ってるか、ただの大言壮語か。そんなところまで見えてしまうのが手書きの文字の面白いところです。
また、文字以外にも、読者の個性が見えるところは多々あります。
エンピツで下書きをしてペンで清書をする人。エンピツだけの人。いきなりペンで書いて修正だらけの人。黒ではなく青や緑のペンで書く人。黒を中心に何色ものペンを使い分ける人。どれも書いた人の個性が現われていて、とても興味深く感じています。
下書きしてから清書する読者だけに限っても、様々な個性があります。下書きの筆圧が高い人。下書きの消し忘れのある人。消しゴムに力を入れ過ぎて破れた手紙にウラからセロテープを貼る人。これだけ書いても、実に個性的ですね。
ペン書きの修正にも個性が出ます。修正液や修正テープを使う人。グチャグチャっと文字を塗(ぬ)り潰(つぶ)す人。丸や四角に塗り潰す人。塗り潰して、それを虫や花の絵にする人。赤ペンで字消し線を引く人。シールを貼る人。などなど……。
とにかく手書きのファンレターは、個性のオンパレードです。どんな読者が自分の作品を読んでるのか、それを想像する上で、大変に役に立つ情報源になっています。
ワープロなら、修飾にこだわれ
先に「手書きが一番」と書きましたが、何もプリントアウトされた手紙を嫌っているのではありません。ワープロでも使い方によっては十分に個性が引き出されます。
ワープロの欠点は、敬語や社交辞令的な文章が妙に鼻に付くところです。
手書きならば文字の大きさが微妙に変わって「ここが一番言いたい!」という部分が見えてきます。ところが、ワープロの場合は意識しなければ文字の大きさは一定です。たとえ本心であっても、ワープロで書かれた文章では、なかなか思いが相手に伝わりません。
もしも同じ大きさの文字だけで相手に気持ちの伝わる文章が書けたら、それは物書きになる素質があると思います。
そこでワープロを使う場合は、意識的に文字の大きさやフォントを変えるようにしてみましょう。それだけで、たちまち人間味のある手紙に生まれ変わります。そうなると、今度は文字が読みやすいというワープロの長所が活きてきます。多少長い文章になっても、ワープロの文字は手書きよりも意外と気にならないものです。
ファンレターは、編集者も目を通します
編集部に届けられたファンレターは、当然ですが最初に編集者が目を通します。ただし、これは検閲(けんえつ)ではありません。作家の人気具合を確かめると同時に、封筒に不審物が入ってないか検査する意味もあります。
だからという意味ではありませんが、『作家以外にも読む人がいる』という事実は、知っておいた方がいいでしょう。まあ、他人に読まれて困る内容を書いてくる人は、いないと思いますが……。
最後に
私は手許に届いたファンレターには、極力『ヘッポコ新聞』という形式で返事を書くようにしています。ですが、住所や氏名がなかったり、差出人が不明瞭な手紙には、返事を書こうにも書くことができません。
ポストに入れる前に、もう一度書き忘れがないか、ご確認ください。