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夢とは何か
 脳が寝ている間に見るものである。
 白昼夢は起きている時に見る夢であるが、脳は睡眠時と同じ状況になっているため、現実とは違う世界を見せているものと考えられる。
人はなぜ夢を見るのか
 これは「レム睡眠(睡眠中に体は麻痺しているが、脳が活発に動いている生理現象)」の生物学的機能を探る疑問と同じと考えられる。
 しかし、現在はまだこれと言える説は存在しない。
・避難訓練説
 夢の中で非常事態に備えているという説。
 女性や年配者に比べて、若い男性ほど他人に襲われる夢や事故の夢などを多く見る傾向がある。
・本能的衝動の解放説
 フロイトによる願望充足説の延長。現実には満たせない欲望を夢の中で晴らして、精神状態を保とうとしているという説。
・ホメオスタシス説
 睡眠中でも長時間にわたって脳の活動を止めるのは何かあった時に困るため、一定時間休めたら暖機運転させるという説。
 この時のノイズが夢を見させると考えている。
・学習記憶説
 パソコンのハードディスクのメンテナンスやバックアップのようなものを、毎日睡眠中にやっているという説。
・脳機能の回復説
 脳細胞は1日に10万個ずつ死んでいく。その細胞に蓄えていた記憶を別の細胞に書き換える作業で見るという説。
・神経生理学的な疲労回復説
 疲れている脳の部分を休ませるために、記憶の保存場所を移動させているという説。
夢はいつ見るか
 かつてはレム睡眠中とされていた。しかし、この考え方では脳波が小さくなる寝入り端に見る事実を説明できない。
 現在では脳の活動状態とは関係なく、どの睡眠段階でも夢を見る場合があることがわかってきた。
 それでも夢の8割近くはレム睡眠中に見ている。
夢はどこから来るのか
 レム睡眠中に見るという説と同じように、かつてはフロイトが考えたように原始的な脳である脳幹が見せるものと思われていた。
 その常識が変わるのは1980年代だが、すでに1950年代から60年代に行われたロボトミー手術(前頭葉前部切除術)と、それを改良したルーコトミー手術(白質切除術)で明らかになっていた。
 先頭部前部にある白質は、妄想を生み出す部位である。ここを切除することで癲癇(てんかん)、強迫観念がなくなり、性格が穏やかになる効果がある。これは欲望も周囲への興味や関心もなくなるためである。だが、同時に夢を生み出す場所であるため、ここを切除された患者は夢を見なくなった。
 フロイトが脳幹が夢を見せると思っていたのは、脳幹を損傷した患者はまともに動くことも会話することもできなくなるため、夢も見ないだろうという思い込みだった。
夢の中の時間はどうなっているか
 かつては夢は一瞬のうちに見る(瞬間生成説)と考えられていたが、現在は被験者測定の積み重ねにより否定されつつある。
 夢を見ている時間と夢の中の時間の長さはほぼ一致していて、統計的には差がないと考えられる水準にある。
 しかし極一部に実際の時間とは極端に掛け離れた『邯鄲一炊(かんたんいっすい)の夢』のようなものは存在している。(管理人自身も数回経験がある)
夢を見ない人はいるか
 断眠症と脳の手術を受けた一部の特殊事例を除くと、夢を見ない人は存在しない。(これまでの被験者測定では1人も見つかっていない)
  ・断眠症 眠れない病気なので、夢を見るはずがない。
  ・脳手術 夢を見るといわれるREM睡眠がなくなる場合がある。
 夢を見ないと思っている人は夢に対する物覚えが悪く、起きた時には忘れているだけである。
朝、見た夢を忘れずに思い出す方法はあるか
 そのような方法は存在しない。ただし、思い出しやすくする方法はある。
 (1) 夢に興味を持つ。これが一番確実な方法である。
 (2) 毎朝、夢を最低1個。できれば2個以上思い出すことを心掛ける。この反復によって思い出しやすくなる。
夢発生のメカニズム
現在の科学では、夢の発生を以下のプロセスと考えている。
 (1) 脳内に電気ノイズが発生している。(この部分のみ科学的事実)
 (2) ノイズの刺激によって脳内ではさまざまな信号が流れている。(ひらめきのメカニズム仮説と同じ)
   ・この時点での信号は、まだ何の意味も持たない。
 (3) (2)のノイズが、脳内から様々な情報を引き出してくる。
   ・ここで無意識で多く考えていたものほど、ノイズで引っ張り出されやすい。
   ・ただし、この時点での情報は、互いに関連のない無秩序状態である。
 (4) (3)のままでは情報が混乱していて意味不明なので、脳の中で解釈できるようにバイアス(検閲)がかかる。
   ・ここで無意識から出た情報を、顕在意識で理解する形に変形する。(象徴や暗示が生まれる理由と考えられる)
   ・顕在意識では知りたくないもの、認めたくないもの、恥ずかしいものが、この作業で隠蔽される。(象徴や逆夢などの発生)
 (5) (4)の作業によって得られたエピソードの断片を、更につなげる作業が行われる。
   ・(3)の一次情報を二重三重に検閲してつなげているため、夢が意味不明なものになると考えられる。
   ・検閲だらけの文章がそこらじゅう黒塗りだったり別の単語や表現に置き換えられて読みづらいのと同じ。
    夢解釈は検閲されて出てきた文章から、元の文章を復元する作業である。
夢の種類と意義
1. 雑夢
  (1) 心的夢
    (a) 願望夢 …… 現実では満たされない欲求を、夢の中でかなえて心のバランスを保っている。
    (b) 心的夢 …… 今の心の状況を夢で見ている。顕在意識の投影なので、心的な予知夢とは違う。
  (2) 刺激夢
    (a) 記憶夢 …… 最近あったできごとを、そのままないし少し形を変えて見ている。
    (b) 刺激夢 …… 外的な刺激で見るもの。睡眠を優先するために、刺激を夢の中で別のものに置き換えている。
  (3) その他の夢
    (a) 邯鄲一炊の夢 …… まるで一つの人生を体験してしまう夢。
    (b) 疑似体験の夢 …… 自分以外の誰かの生活や、記憶をたどっているような夢。
    (c) 予行演習の夢 …… 非日常に備えて、夢の中で先行体験するような夢。
2. 予知夢
  (1) 心的予知夢
    (a) 指導夢 …… 良心が日常の好ましくないと感じる行いを、夢という形で見ている。
    (b) 警告夢 …… 心のうちにある不安、葛藤、あせり、恐怖などを夢という形で見ている。
  (2) 状況的予知夢
    (a) 未来洞察夢 …… 無意識下で感じ取った変化を、洞察してメッセージとして見る夢。
    (b) 未来予知夢 …… いわゆるオカルト的な予知夢。予言夢と表記することもある。
 
 夢解釈では未来予知夢を除く部分を解釈の対象としている。
夢と現実のタイムラグはどのくらいか
 (1) 夢→現実(予知夢)
   この場合の研究はほとんどないと思われる。
 (2) 現実→夢(記憶夢)
   現実に起きたことが夢にあらわれるまで、翌日と1週間後の2つの大きな山がある。
   これは海馬から大脳新皮質へ記憶が移される期間(3日目)とは明らかに違うため、記憶整理で夢を見る説に反すると思われる。
夢解釈は有害か
 夢を脳内の情報整理と考える人の中に、夢解釈を有害と考える人たちがいる。
・逆記憶説
 夢のメカニズムを「記憶から取り出して捨てようとした情報が夢になる」と解釈する仮説である。
 この前提によれば夢を思い出す行為は捨てるべき記憶を脳内に戻してしまうため、長い目で脳の記憶容量が超えることを危惧する。
 また捨てるべき記憶がいつまでも残るため、精神的にも良くないと考えている。
 なお、この仮説は経験や実験にはまったく裏打ちされてないため、現在は無視されている。
・トラウマ、フラッシュバック現象
 夢を思い出した途端、過去のトラウマがフラッシュバックして性格が変わる現象がいくつか報告されている。
 非常に少ない事例だが、これをもって夢解釈を有害どころか危険と考える人たちもいる。
 そこまで重くなくても、本来なら知らないふりをして精神を保っていたことに気づく危険もある。
・脳機能異常・精神異常誘発説
 夢解きに興味を持つ人には、記録をつけることで2つの特徴が見られることがわかっている。
  (1) 夢がリアルになる。
  (2) 明晰夢を見る回数が増える。
  (3) 夢が現実を乗っ取る。夢と現実の区別がつかなくなる。
 どちらか一方だけのケースも多いが、いずれでも通常の脳波測定では見られない前頭葉の微弱電流が観測されている。
 通常では見られない=異常な刺激と考え、それが脳機能の異常を誘発しないかと危ぶんでいる人たちがいる。
 またリアルな夢や明晰夢は眠りが浅くなるため、それが精神衛生上良くないのではないかと考える人たちもいる。
 それが度を超えると、夢と現実が区別できなくなるとも言われる。
・自己責任、心の問題偏重説
 上記3つの有害説の他に、管理人自身が最近の夢解釈の傾向に感じた違和感から、有害と感じる部分を提示する。
 日本はバブル崩壊後の長引く不況の中で、問題を自己責任や個人の心の問題として冷たくあしらう傾向を強めている。
 近年の夢解きでもその影が色濃く反映され、どれもこれも問題を矮小化して、夢主の心の問題として片づけようとする傾向が感じられる。
 実際、「日本語→英語→日本語」と同じことを夢でやってみると、かなりの夢で個人の心の問題に矮小化する傾向が見られる。
 これは鬱病患者に「ガンバレ」と言うようなもので、相手を精神的に追い込む危険な行為である。その意味で有害であると考えられる。
・トランス説
 最後はスピリチュアルな理由から、危険を呼びかける人もいる。これは精神異常誘発説の一種とも考えられる。
 夢に興味を持つと、神霊によって予知夢を見せる対象として選ばれてしまう。
 これによって、エドガー・ケイシーのようにたくさんの予知夢を見せられるようになり、実生活に影響が出てくるようになる。
夢の解釈は可能か
 前提によって意見が分かれる。
・自由連想法仮説
 この仮説では夢は一人一人解釈が異なると考えるため、夢を見た本人以外には解釈できないことになる。
 となると他者にはまったく解釈できず、本人も解釈するには知識が必要なため、この仮説では事実上は解釈できないと結論される。
・象徴連想法仮説
 民族によって夢に出てくる事物にある程度の共通点があるため、解釈は可能と考える。
 一般的な夢解釈は、この仮説を無条件に前提としている。
他人の夢の解釈は可能か
 他人の夢は一般的な象徴連想法による解釈はできるが。厳密な解釈はできない。
 夢は個人の記憶や好みなどで意味が変わるので、完全な夢の解釈は夢を見た本人にしかできない。
 ただし、あくまでも厳密な解釈はできないというだけであって、ある程度の解釈は可能である。
夢を他人に語ることは無意味か
 自分の夢に興味はあっても、他人の夢には興味のない人は多い。
 しかし今、世の中がどんな状況にあるのか、また親しい相手が互いにどのようなことを考えているのか、子供がどのように成長しているのかなど、他人の夢を聞き、夢を語り合うことを有用と考える心理療法カウンセラーは多くいるらしい。
 実際に、夢を語り合う習慣のある人たちの精神状態は、非常に良好だそうだ。
 余談ながら夢関連の本で夢を語り合う部族として知られたマレー半島のセノイ族は、のちに最初の著者の創作で実在しないことが明らかとなっている。
夢は何を伝えているか
 現在の本流の科学では、夢解釈はスピリチュアルの扱いである。
 ただし完全否定してるわけでもない。
・本流の科学の認める解釈
 夢は基本的に顕在意識の産物である。ただし映像化される過程で無意識が介在する。
 そこから無意識からのメッセージを読み解くヒントが隠されていると解釈できる。
 よって洞察的な未来予知は十分に考えられる。
 なお、本流の科学からすると今はオカルト扱いだが、多くの学者があの手この手で調べている分野もある。
・エドガー・ケイシーの夢解釈より
 夢は超意識から与えられるメッセージであり、未来に起こることはすべて夢で教えられている。
 ただし、すべての夢がメッセージではなく、多くは単なる雑夢である。
・魂の生まれ変わり等に関する研究より
 臨死体験の体験談や退行催眠で前世を探る過程で垣間見る中間世界(死後の世界)から得られた知見である。
 現世は、どうやら魂を鍛えるための修行場のような場所である。
 天にはそれぞれの魂を指導する存在がいて、それが夢を通して今の状態ややるべきこと教えている。
 それに加えて未来に起こることも、夢を通して教えて準備するようにうながしていると考えられる。