公開:2018年3月14日 更新:2018年7月14日
小説史〜ライトノベル
- ライトノベルの時代
- 現在、まだ主流とされているムーブメントです。
- ですが2010年頃には明らかな末期症状を見せ始め、現在に至っています。
- 始まりは1990年代
- 諸説ありますが、この頃に出てきた新興レーベルがライトノベルを牽引してきたこともあるので、動きを語る上では「この頃」と考えた方が良いと感じます。
- 衰退するSF小説と入れ替わるように出てきた、主に中高生をターゲットに出てきた大衆小説です。
- SF小説との大きな違いは内容が自由であること。それと日本では低俗とされるコメディや擬音を積極的に使い始めたことでしょう。
- ターゲット層が中高生であるため、1990年代の前半はジュブナイル小説やヤングアダルト小説と呼ばれていました。
- 表紙や挿絵をそれまでの挿絵画家ではなくマンガ家やアニメーターを起用したため、マンガ小説という呼び方もありました。
-
- 初期のムーブメントは、おそらく「スレイヤーズ」という大当たり作品が生まれたことでしょう。そのためファンタジー小説という呼び方になります。
- ですが、まだその頃は作品に大きな縛りがありません。「スレイヤーズ」がブームになった頃には、ラブコメを忌避する風潮もなくなっていました。そのおかげもあって、その後もしばらくは作家たちに自由に書かせて方向性を模索していました。
-
- 現在の「ライトノベル」という呼び方は、2000年を少し過ぎた頃に急に出てきた感があります。それが、そのままこの時代のジャンルを呼び方として定着しました。
- 方向性を固めたのは電撃文庫
- 電撃文庫も初めの頃は先行したレーベルと同じ方向性で次のムーブメントを模索していました。
- ところが1990年代の終わり頃、作品の内容ではなく売り方で勝負をかけてきました。この頃の電撃文庫は1冊あたりの売り上げは先行レーベルの半分にも届きませんでしたが、月の発売点数を2倍〜3倍にして書店の棚を奪うという戦略を始めました。
- 出版点数を稼ぐために、新人賞受賞者だけでなく、最終選考に残らなかった三次選考止まりの応募者をもどんどんデビューさせました。それに量産を優先させるため、まさに「ライトノベル」の名称通り内容の軽い作品を大量に世に出します。
- そして2000年頃から新シリーズには可愛いイラストを描くイラストレーターを多用して「萌え」を盛り込ませる戦略を加えました。それが大当たり。ここから可愛いイラストを使いやすい設定という制約が生まれていきます。
- ライトノベルという縛り
- 上にも書きましたが、ライトノベルという呼び方が定着したせいか、次々と縛りが生まれ始めました。
-
- 凝った設定は禁止、設定の共通化
- 軽く読めるようにするため、凝った設定の作品が嫌われるようになります。
- そのため一部の人がハイファンタジーと呼ぶ世界観をゼロから組み立てた世界ファンタジーを企画しても、設定を見た段階で弾かれるようになりました。
- ファンタジーものを書きたいと思っても、RPGを流用したものしか認められなくなります。それでも始めの頃は作者の方も凝った名称をつける差別化を行ってましたが、それもやがて英語一辺倒になってしまい……。
- 主人公は少年
- ライトノベルは読者が少年だからという理由で、女性主人公が企画段階から禁じられるようになりました。
- それでも事実上の主人公は女性で、それを近くにいる男の視点で語る手法が用いられましたが、やがてそういうやり方も封じられるようになります。
- 歴史小説でも異世界小説でも主人公は現代人の少年
- 価値観や常識の違いをわかりやすくするために、そういう制約が求められました。
- おかげで転生、タイムトラベルなどを使った作品が増えました。
- 舞台は学園内(×行き詰まり中)
- 舞台設定をより簡素にするため、異世界でも現代でも物語の大半を学園内で過ごすように求められます。
- また教師以外の大人を出さないという制約を課してくるところも出てきました。その教師も20代前半という縛りまで……。
- 特殊な部活や専門校縛り(×奇をてらいすぎて自滅)
- 更に舞台設定を簡素にするため、部活や特殊な専門学園という縛りを課してくるところも出てきました。
- そこで対校戦をやれば、いくらでも話を盛り上げられるという安易な縛りです。
- このような感じで創作の自由度がなくなれば、あっという間にやり尽くされるのが道理です。
- 当然、自由度少ない後半の縛りほど早くやり尽くされ、今はゲーム世界などに転生するパターンの作品に戻ってる感じでしょうか。
- 教育委員会の反省?
- その一方であった別の動きです。
- 前のムーブメントであるSF小説は低俗であるとして、PTAや教育委員会から目の敵にされました。
- ですが、平成初期のライトノベルはその反省や反動なのか、それとも子供に読書習慣を付けたい教育現場の思惑なのか。学校の図書館にライトノベルが並ぶことが珍しくなくなりました。
-
- それどころか教育委員会が「国語教師が覚えるべき現代作家100人」というものを作り、そこに何人ものライトノベル作家の名前も書き連ねていました。大変な変わりようです。
-
- ちなみに管理人が利用している市立図書館にはSF小説時代の作品はほとんど置かれてません。それに対してライトノベルは非常に充実しています。こういう現象は時代の流れをみごとに反映してるのでしょうね。